月刊フルーツライフ No.125 |
給食アレルギー事故から十年、
もう一度失われた命を考える
2012年12月20日、調布市の小学校の給食を食べた女児がアナフィラキシーショックで亡くなりました。
この詩は亡くなった11歳の女児の書いたものです。乳アレルギーの彼女は友だちに、大人になったら科学者になってアレルギーを治したいと将来の夢を語っていました。
「この手で科学を学びたい」と絵を描いています。
食物アレルギーがあり同じものが食べられないと、学校で一番楽しいはずの給食の時間が、一番辛い時間に変わってしまいます。
それが子どもの時であったとしたらより悩みは深くなり、心に傷を負うこともあるかも知れません。
安全なはずの給食、できていなかった仕組み
安全なはずの給食でどうして最悪の事故が起きてしまったのでしょう。
その時学校ではこうしたことが起きていました。
①女児の乳アレルギーは認識しており普段から「除去食」を喫食。
②当日の給食のチヂミはチーズ入りで女児は「除去食」を喫食。
③人気のなかったチヂミが残り担任がおかわりを募った。
④女児がクラスの完食目標に貢献しようとチヂミのおかわりをした。
⑤チヂミの欄にあった女児が食べられないX印を見逃し女児に渡した。
⑥給食の時間が終わった1時122分頃女子が気分が悪いと訴えた。
⑦1時31分頃、教員と栄養士が女児が誤って「普通食」を喫食したことに気づく。
⑧女児にアレルギーの全身症状が現れる。
⑨女児のランドセルにエピペンがあることを確認。
⑩校長が1時36分頃エピペンを注射。
結果的に学校の対応は、女児のアレルギーの全身症状に動揺し直ちにエピペンを打てなかったことで最悪の事態を招きました。
安全であるはずの給食で女児は命を落としました。大切な子どもを学校でなくした両親、誤って「普通食」を渡した担任、エピペンを打つことに躊躇した校長、それぞれの違いはあっとしても関係した人は一生その十字架を背負って生きていかなければなりません。
必ず起きるヒューマンエラー
事故から十年、学校給食の現場は変わりました。文科省は事態の重大さに鑑み、54年ぶりに学校給食法を改正、食物アレルギーへの対策を学校に求めました。
事故の反省からできあがった仕組みが「調布モデル」です。事故当時学校ごとにあった対応策を一つのルールに統一し、より現場に沿ったマニュアルを作りました。
これまでアレルギーの子に配慮し見た目の区別を避けてきたことを改め、普通食と除去食の見た目の違いをはっきりし容器そのものから区別しました。トレーの色も普通食は緑、除去食はピンク、給食にない食材にアレルギー反応がある子どものトレーを青としました。
献立表には、栄養士・管理職・保護者の確認欄を設け三者で献立の内容を共有することにしました。
調布モデルは、どれだけ注意しても起きかねないヒューマンエラーをゼロにしようとしています。
食物アレルギーの数
文科省の直近2013年の調査では、小中高生の4.5%、約40万8千人の子どもにアレルギー症状が見られます。2004年の調査では2.5、約32万人だったことを考えると対象生徒数は大きく増加しています。
また厚労省の人口動態統計によると、直近二十年間で49人がアナフィラキシーショックで亡くなっています。
子どもたちは給食の献立を選ぶことができません。先生は好き嫌いのないよう完食を勧めます。そうだから こそ学校給食は安全でなければなりません。
アレルゲンの62%が乳・卵・小麦です。この三大アレルゲンが必ず含まれている食品がケーキです。
FLは調布市の事故以前からアレルギー対応デザートの開発をつづけてきました。FLは特定アレルギー7品目工場内持込禁止のアレルギー完全対応工場です。
その信頼が全国の学校給食での使用実績に表れ、その実績がイオンに評価され全国のイオンでイオンプレミアムとしてアレルギー対応ケーキを販売しています。
アレルギーの先に見つめる世界
FLにはあんしんがとうというアレルギー対応ブランドがあり、全国の消費者から多くの支持を得ています。
あんしんがとうは昨年4月から商品の一部をヴィーガン対応に変えました。ヴィーガン対応としたことで消費対象は拡大し販売数に如実に現れました。
乳・卵を使用しないアレルギー対応デザートは、動物性原料を使用しないヴィーガンと高い親和性があります。そして今ヴィーガンの背中を押しているものが環境です。
環境がビジネスに
一昨年グラスゴーで開催された気候変動枠組条約COP26で、前イングランド銀行総裁のマーク・カーニーをはじめ世界金融の中枢たちが集まり「地球に残る成長可能なビジネスは環境しかない」と環境ビジネスに百兆ドルを集めました。
COP26を機に世界経済が一気に環境にシフト、結果的にトヨタ自動車の危機が表面化したのも世界金融の環境ビジネスへの全面転換でした。
エネルギーを始め凡ゆるセクターで環境圧力が高まり温室効果ガスの排出を減らしているにもかかわらず、食品セクターの排出量はむしろ増加しています。
そこで注目がヴィーガンに集まりました。元からヴィーガンは動物福祉Animal welfare の倫理的側面から始まりました。しかし今では環境そのものとしてビジネスになってきました。
フェアトレード、人権が付加価値に
ヴィーガンと同じように、倫理的側面からビジネスに変わってきたものがフェアトレード、すなわち人権です。
今年のバレンタインでは、ブランドや美味しさに加えチョコ原産国の児童労働禁止等、人権が守られているチョコがフェアトレードとして付加価値を生んでいます。
あんしんがとうはヴィーガンデザートの原材料を今後フェアトレードとしていきます。
FLは「環境と人権」を倫理面を超えた具体的ビジネスとして構築していきます。