月刊フルーツライフ No.157 |

厳しかった学校給食
マイナスをプラスにした病院・ホテル事業
九月はFLの決算期です。
毎年変化しつづけるFLにとって今期は大きな節目の一年となりました。
今期事業全体に影響を及ぼしたものは物価高、なかでも米価の急激な値上がりはFLの全ての事業に影を落とすことになりました。
年々下がっていく学校給食
昨年児童数がいよいよ600万人を割り込み学校給食の売り上げは確実に下がっています。
更に食材の値上がり、とりわけお米と野菜の値上がりが著しく、年間予算で献立を作っている学校は予算不足という厳しい現実に直面することになりました。
予算不足の影響から
狙い撃ちされた冷凍フルーツ
学校給食の主食のお米が倍以上になり、野菜の価格も時に通常の3倍にもなれば年間の献立を変えなければならなくなります。
一年間の予算で運営しでいる学校では、主食のお米と不可欠な野菜を削るわけにはいきません。勢い予算内で可能な献立に変えていかざるを得ず、その時削られる献立はデザートです。
例えば週に一回使用していたデザートを月に一回に減らしたり、価格の高いフルーツを安いゼリーに置き換える等、結果的に副食のデザート系は大きく削られることになりました。
温暖化によるアイテムの減少
FLの冷凍フルーツのアイテムの殆どはタイ・コスタリカ・ギリシア等海外産のフルーツを使用しています。
一昨年から世界中でパイナップルが不作に見舞われ、世界のパインの流通は通常の半分以下になりました。当然価格は上昇し、一方でパインそのものが確保できなくなってきました。
FLの学校給食アイテムの一つにコスタリカ産スティックパインがあります。他の冷凍フルーツが缶詰原料を使用しているのに対し、コスタリカ産スティックパインはパイナップルをそのままIQF冷凍にしています。そのため学校給食では根強い人気商品です。
そのスティックパインが温暖化の影響から収穫が激減し輸入が止まってしまいました。
スティックパインはパインスライスに続く主力商品であり、中心アイテムの欠品は大きく売上を下げることになりました。結果的に冷凍フルーツは値上げをしたにもかかわらず全体で昨年の2割減という厳しい数字となりました。
劇的に下がったクリスマスデザート

クリスマスは学校給食で一番予算を割くことのできる最大行事です。
ところが昨年は予算不足の煽りを受け、クリスマスケーキの採用が見送られたり、安価なものの使用になったりしてしまいました。
FLは毎年50万食程のクリスマスケーキを製造していますが、昨年は35%減となってしまいました。
大きく数字を伸ばしたオーガニックフルーツ

冷凍フルーツとクリスマスケーキのかつてない落ち込みの一方、厳しい予算のなか唯一健闘したものがオーガニックフルーツでした。
名古屋市をはじめ各地の中核市で採用が進み、年間80万食程の製造となりました。
学校給食が厳しい中、環境に配慮した有機フルーツの健闘は、国内で有機JAS認証を取得しているFLだけが製造できる商品です。
どんな時代であってもその時々に対応した製品を開発・提案していくことこそ企業の持続的成長を可能にします。
物価高、米の値上り、全てに大きな影響が
主食である米の急激な値上がりは、学校給食以外でも年間予算で献立を組んでいる病院系にも影響を及ぼすことになりました。
取引病院数はこの一年で大きく増加しているにもかかわらず、米をはじめとした物価上昇の影響でフルーツの使用が減り、病院増加数の割合に比例する程売り上げが伸びていません。
必要な主食の値上がりにより副食が削られることは、業務用は勿論エンゲル係数の上昇した家庭でも同じです。
物流コストの大幅増加
今期は物流コストが2割程上昇しました。しかし売り上げが多くなれば当然出荷は多くなり物流コストが上昇することは致し方のないことです。それをどのように商品に反映させるかが企業経営に問われることになります。
定温物流網の整備が直接取引の拡大に
物流コスト増加の一方で、物流網の整備はホテル・病院等の直接取引を増加させることになりました。
中でも近鉄・西武系という保守的な鉄道企業傘下のホテルが、FLとの直接取引を前提としていることが流通業界の変化を如実に現しています。
更に国内企業との柵を持たないヒルトン・コンラッド、IHG(リージェント・インターコンチ・インディゴ)等外資系ホテルは当初から直接取引を前提としていました。
物流コストの増加が直接取引きとの引き換えと考えれば、ホテル・メーカー共に中間マージンを省くことで物流コスト増加分を帳消しにすることが可能となります。
つまり企業にとって全てがマイナスという事は決してなく、まして新しい経済の流れには必ずチャンスが潜んでいます。そのチャンスを見つけていく事が企業経営であると思います。
ホテル事業の進展が直輸入と仕入先の総替えに
競争の激しい外食事業は、これまで波風の立たない、むしろ波風を立たせない学校給食を事業の中心に置いてきたFLにとって試練となリました。
商品の競争力を高めるため、製造コストを抑え更に利益率を上げるために原料仕入れをゼロから見直しました。
設立以来果物は中央市場から仕入れていました。しかしホテル・病院事業の売上比率が上がるにつれ、市場からの仕入価格では薄利となり品質も一定せず利益が取り辛い状況となってきていました。
そこでカリフォルニアからの直輸入とInternational Trading Companyと取引を始める事で課題を解決し、結果的に原料仕入先を総替えすることになりました。
メーカーにとり仕入先は数が少なく販売先以上に重要な存在です。来期以降海外でより安定的な仕入ができるよう更にパイプを太くしていきます。
今期は諸物価高騰の厳しい中、革命的な改革が新事業を生み出し、それに伴う仕入先の見直しが学校給食の落ち込みをカバーする事ができました。
変化を恐れ改革に躊躇し学校給食にしがみついていたとしたらFLは立ち行かなくなっていたかも知れません。
人手不足に対応したノンシフト自由出勤
FLの工場は現場シフトを組んでいません。ノンシフトで表の名前欄に各人が自分で希望出勤日・AM・PMにOをつけて生産しています。自由に働く事が可能な職場として多くの応募があります。
現在の日本で唯一労働余力のある層は主婦層です。子育てしながら働く事ができる環境を作っていく事が人手不足に直面する企業にとって重要な課題であると思います。
企業も人も、困難に直面してこそ新たな挑戦を行います。
試練こそが前進する力であるとFLは信じています。

