月刊フルーツライフ No.154 |

一昨年東南アジアを襲ったスーパーエルニーニョは、エルニーニョ現象が収まったにもかかわらず、東南アジアでは旱魃と高温化が続いています。
タイでは農産物生産が大きな打撃を受け、それに伴ってパイナップルが記録的な価格高騰となっています。左がタイからの報告です。
できなかったタイ🇹🇭製造
Tパインスライス&T黄桃
昨年ホテル事業の拡大が、夏の冷凍フルーツの繁忙期と重なり工場の生産キャパをオーバーしました。
生産を維持するために急遽外国人派遣労働者を大量に雇用する一方、一時加工のデルモンテパインを使用するなどで急場を凌いだ結果、製造コストが大幅に増加しました。
そこで工場生産の余力を作るために、原料供給地のタイで最終加工まで行うプロジェクトを立ち上げました。
その商品が今春から販売予定だったTパスラとT黄桃でした。

新しいことに挑戦すればこれまで考えられなかった困難が待ち受けています。
製造を委託するタイSRY社にパイナップル原料が集まらず工場自体が閉鎖されることになりました。
また原料価格の急騰から、当初予定していた価格が維持できなくなりました。気候変動が原因とはいえ、昨年から何度もミーティングを重ねたプロジェクトは万事休す…。
諦めたコスタリカ🇨🇷スティックパイン
昨年コスタリカのスティックパインの輸入が大幅に遅れました。
一昨年の秋にオーダーしたにもかかわらず、遅れに遅れて名古屋港に入船したのは昨年の8月でした。
PB・NB共に定番のスティックパインの欠品は学校給食では許されません。急遽自社製造することになり工場の生産を圧迫、ここでも製造コストを大幅に増加させることになりました。
更なる改革の始まり
ホテル事業に参入し順調に数字を伸ばしてきたにもかかわらず、逆に工場の疲弊と利益を圧迫、更にそのソリューションとして用意したタイ製造が頓挫…。
万事休すと思われたところからが運営を預かるリーダーの力が試されるところです。
原料在庫が救ったパインスライス・黄桃の生産
FLはコロナ時に輸入が止まった経験から、海外の缶詰原料はほぼ一年分在庫しています。
今春製造予定だったTパインスライスの輸入が難しくなった時点で国内製造のパインスライスを代替としました。原料は既に確保してあり、仕入価格はパイナップル高騰前の価格です。
黄桃に関してもほぼ4コンテナのギリシア産黄桃缶の在庫を持っていたため国内製造に代替することができました。
現場のリーダーシップが製造能力を増強
一昨年冬からスタートしたホテル事業はチルドフルーツが伸長、結果的に現場作業の負担が大幅に増えました。
工場長・副工場長をはじめ現場リーダーが作業工程をゼロから見直し、製造器具を増やし、製造能力を大きく増強しました。
外国人派遣労働者依存なく稼働
チルド製造に合わせた現場の生産能力向上は、昨夏人件費の大幅増加の原因だった派遣労働者に依存せずに、今夏の繁忙期を乗り越えつつあります。
原料供給を根本から問い直した苦闘の一年
チルドフルーツの取り扱いが増えたことで市場から調達する生鮮果物が倍増しました。
しかし価格変動が大きい上に、品質が一定せず、中でもパイナップルの歩留は極端に変わります。
国際的に高騰するオレンジと歩留の悪いパイナップルは、FLの利益圧迫の最強コンビでした。
アドバンテージを手にした
アメリカ🇺🇸オレンジ直輸入

昨年7月、代表が単身渡米し、カリフォルニア州オレンジカウンティにある商社WRとオレンジ直輸入の契約を締結しました。
その結果年間通して、米国産と豪州産のオレンジを輸入することが可能になりました。
価格と品質に圧倒的アドバンテージのあるオレンジの仕入れが可能になったことでホテル営業の強力な主力商品となりました。今では毎月40f/1コンテナを輸入しています。
赤字続きのパイナップル
フィリピン🇵🇭総代理店と契約

一方利益圧迫最強アイテムのパイナップルは、フィリピン世界有数企業PHILPACK との取引を模索しました。
インターナショナルカンパニーと繋げるため、FL/AG タイの Amy を通してコンタクトをとり始めました。半年以上の交渉の末、日本総代理店との契約を締結することができました。
パイナップルの鮮度は輸入後2週間と言われています。これまでFLが市場で仕入れていたパインは鮮度が悪く、その結果歩留が落ち利益圧迫の原因となっていました。
根本からの改革に挑んだ一年
昨夏の総括を踏まえ、FLは一年かけて改革に取り組んできました。
コロナが終わった後には円安・戦争・関税、そして気候変動による農産物供給の不安定と、問題は次々にやってきます。しかしそうした問題を一つひとつ確実に解決して積み上げ答えを出していくことこそがFLのパトスです。
分かりやすい金融機関の姿勢
154号蛇足の笑い話は金融庁の動向が如実に表れた金融機関の変化でした。
無金利ジャブジャブの金融行政が変わり、融資のハードルがいきなり上がったことです。
経営者として常に覚えていなければならない事、それは銀行の言うままに融資等を受けているといきなり資金を引き揚げられかねない事です。
内部留保と経営者の手持資金は本当に重要です(笑)。

