月刊フルーツライフ No.126 |
いよいよ始まる有機果物
全社を挙げて取り組んできた有機JAS認定工場の申請が3月中にも認可されることになりました。
国内の有機JAS認定工場は米・茶を中心に穀類・野菜が殆どです。その中で果物専業メーカーの有機JAS認定工場は全国的にも稀な認可となります。
フルーツライフ(FL)が認定工場を目指してきた有機JASとは一体何なのでしょう?
いわゆるJAS法「日本農林規格等に関する法律」のことです。
1999年、JAS法の中に新たに有機食品検査認証制度が加えられ、有機農産物の規格が初めて法律で定められることになりました。
その結果、法律制定以前のように生産者が任意に「有機作物」と表示することができなくなりました。有機作物を明確に有機JAS認証と定めたことで、消費者は安心して有機作物を購入することができるようになりました。
有機農業/オーガニックは国際的にこのように定義されています。
資源の循環を育み、生態系のバランスを促進し、生物多様性を保全する文明的・生物学的・機械的な手法を統合したもの。
有機JAS認定工場としての役割
次に有機JAS認定工場にはどんな役割が法律で課せられているのでしょう?
JAS法は有機農産物取扱業者に厳しい認証制度を設けています。これが今回FLが取得した「有機JAS小分業者」の認証です。
例えば、農家と流通業者が有機作物を売買する場合、一般に10kg/箱のようなロットで売買されます。それを消費者向けに500g/袋のように小分けして販売する役割が有機JAS小分業者です。
有機農作物と非有機農作物が混在して流通すると、一見して区別がつかないため、悪意にすり替えや水増しが起こりかねません。また悪意でなかったとしても有機・非有機が混在することで過誤が起きかねません。それでは厳しい有機規格で生産された作物が消費者に届くまでに台無しなってしまいます。
JAS法ではこうした不正や過誤を防ぐため「有機JAS小分業者」を認定制とし、二つの役割を定めています。
①有機作物を小分けし、それぞれが有機栽培であることを「格付け」する。
②小分けした袋に有機JASマークを貼付して「小分け」する。
有機JAS認定FL工場にできること
有機JAS認定FL工場内は、有機・非有機の基準を設け区分管理しています。
また農薬を使用しないで作った有機果物を次亜塩素酸で洗浄することはできません。そのため果物の殺菌洗浄は炭酸水素ナトリウム、いわゆる重曹で行います。
次にカット・個包装し、フィルムに有機JASマークを貼付して有機フルーツができあがります。これまで有機フルーツを丸ごと一個でしか提供できなかった学校給食に、1/4など適したサイズにカットし個包装可能となったことで手軽に子供たちに提供することができます。
学校給食の有機食材使用の流れ
千葉県いすみ市は2015年に「いすみ多様性戦略」を策定し、市をあげて有機稲作に取り組み始めました。二年後の2017年には全ての小中学校の給食を有機米に切り替えました。さらに2018年には野菜に拡大し、給食に使用する野菜の2割を有機野菜にしました。
また名古屋市では、保護者が市に働きかけ2021年政令市として初めてオーガニックバナナを14万人の子供たちに提供しました。
保護者には成長期の子供に安全で美味しいものを食べさせたい思いがあります。オーガニック給食の高まりは、こうした保護者を始めとする市民の声に行政が応えたものです。
進む環境教育、子供たちに身近なSDGs
今学校では環境教育が盛んに行われています。SDGsも大人よりはるかに子供たちは理解しています。
学校給食の役割は、子供たちに必要な栄養を提供するとともに、食を通じて学ぶ目的があります。皆んなで一緒に食べる給食の時間に、環境学習の機会があることは食育の実践そのものです。
環境問題を農業から考える
地球環境は瀬戸際にきています。
土壌の劣化が急速に進んでいます。国連の発表によると過去45年間で耕作地の40%が消失し、毎年1千万haの耕作地が失われています。
水が枯渇しています。地球の70%は水で覆われています。その内の98%は海水で、残りわずか2%が淡水、さらに淡水の内70%は南極大陸の氷です。実際に耕作に使うことのできる水は本当にわずかなものです。
しかし過度な農地灌漑の末、世界中で水源は失われています。アラル海は消失し、古代文明の始まりの時から水を湛えていた長江は干上がってしまいました。
環境に配慮した人が生きるための農業
国連環境計画/UNEPは耕作地消失の原因は農業にあるとしています。
安価な作物を生産するために、大量の化学肥料・殺虫剤・エネルギー・水を使用し、農地が自然に回復する力を失わせているためです。今農業を変えていかなければ食の未来、地球の未来はありません。そして持続可能な農業の一つの答えが有機農業です。
拡大する世界の有機農業
2020年現在、有機農業面積は7千150万ha、有機農産物の市場規模は米欧中豪を中心に1千億ドルを超えました。日本経済もいずれ有機農業と有機市場を視野にいれざるを得なくなってきます。
そして国内で一番最初に有機需要が拡大するマーケットが学校給食です。
減少する需要に有機食材
少子化に伴い学校給食の需要は確実に減少していきます。これは営業努力では如何ともし難いスピードで進んでいます。
その中で企業が生き残り、更に成長していくためには新たな価値を生み出していくしか道はありません。
FLは有機JAS認定工場を取得したことをスタートとして、今後有機果物や世界のオーガニック食材の製造・販売に挑戦していきます。
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みよし市と福祉避難所の調印式
去る2月9日、みよし市と、FL代表が理事長を務めるNPOいきもの語りが、みよし市役所で福祉避難所の協定調印式を行いました。
調印式には市長他、防災・福祉各部長が出席、新聞社・TV局も取材に駆けつけました。
いきもの語りが福祉避難所として指定されたことで、気管切開・胃瘻等医療的ケアの必要な障がい者が医療従事者の揃った施設で、安心して災害時も過ごすことが可能になりました。
今後みよし市と協力して体制を整えていきたいと思います。
FLは「環境と人権」を事業の中心とし、持続可能な成長を目指していきます。