月刊フルーツライフ No.123 |
コロナ、戦争、円安、振り回された一年
二月のロシアによるウクライナ侵攻により世界は大きく変わりました。長引くコロナ禍を乗り越え、やっと世界経済がリスタートした矢先に起きたウクライナ戦争はコロナ以上に世界に影響を与えています。
原材料を輸入に頼る日本経済は大きなダメージを受け、中でも食品は食糧自給率の低さから直接国民生活に影響を及ぼしています。
急激な円安でリスクヘッジ不能に
FLは年間100~150万ドルの輸入を行っています。輸入先はタイ、ギリシア、コスタリカ、中国、南アフリカなど広範に及び決済は全てUSドルで行っています。
年初為替レートを110円=USドルで事業計画を立てていました。さらに為替リスクをヘッジするため、輸入総額の50%余りのクーポンスワップを組んでいました。
クーポンスワップとは、ドル⇔円を固定レートで長期に渡って交換する為替上の契約です。
年初FLでは4本のクーポンスワップを持っていました。レートは1ドル=102~103円のスワップを3本、円安が進行し始めた時に結んだ117円のスワップがありました。
クーポンスワップには一定の解除条件が付いており、消滅条件型では、定めたレートにドルが到達した時点で消滅する所謂ノックアウトという仕組みがあります。
FLでは3本のクーポンスワップが円安が進んだ四月に消滅、残り1本はレートが148円に達した十月に消滅しました。その結果全てのスワップが消滅し、現時点で為替リスクをヘッジする術がなくなり、全てスポットのUSドルでTT決済せざるを得なくなっています。
ケーキ生地・デポジッター・果物洗浄三つの自動化
こうした厳しいビジネス環境の中、FLでは大きな設備投資を行いました。
■生地自動製造機と高機能デポジッター
昨年学校クリスマスケーキの受注数が製造キャパを超え、やむなくイオン製品を欠品することになりました。
その反省からケーキ製造の自動化を進め、この夏ケーキ生地自動製造機と高機能デポジッターを導入しました。
これまで熟練した作業者しか造れなかった生地製造を自動化し、さらに絞り袋による手作業で行っていたデコレーション作業を自動化することで作業者の疲労を軽減しました。
今年の学校給食予算は食材費高騰の煽りを受け厳しくなっています。しかし前年比ダウンを予想していたクリスマスケーキの受注数が、現時点で45万食となり昨年に近づいています。
製造現場では必死の製造が続いていますが、新設備がなかったら昨年同様出荷をショートさせていたと思います。
■果物自動洗浄機
生産工程の中で果物洗浄は力のいる作業です。男性作業者が行ってきた洗浄作業を自動化し作業者の負担を軽減しました。
FL工場は女性作業者の多い現場の上高齢化も進んでいます。作業者の負担を軽減し効率化することは労働人口が減少する中で欠かせない投資です。
フルーツと私
観光・ホテル・外食に
病院・老健を対象にしたメディ カル事業が新たな展開を迎えています。
きっかけは去る十月に開催された「サトー商会給食大展示会」でフルーツと私が大きく取り上げられたことです。
これまでメディカル系を対象としてきた事業が、この展示会を機に観光・ホテル・外食を対象として拡がることになりました。
回復する観光・外食需要、追いつかない人手
第7波の収束とともに観光・ホテル・飲食などが活況を呈してきました。
一方で長引くコロナ禍の中、やむを得ず人員整理を行なってきた企業も多く、急速に回復する需要に人手が追いつかず通常営業ができない企業が増えています。
一日も早いコロナ明けを夢見ていたにもかかわらず営業を制限せざるを得ない悔しさは如何ばかりでしょう。
効率、安全、環境を考えたフルーツと私
FLメディカル事業が全国に拡大した理由は効率と安全と環境です。
果物をカットする時間のない厨房、生食である果物の感染リスク、そして廃棄ロスを 考える必要のない効率性と環境対応、この3要素は食を扱うどんな事業にも共通して必要なものです。
FLがこれまで観光・ホテル・外食業界に参入してこなかった大きな理由は、業界の熾烈な競争下での価格競争を敬遠してきたからです。
ところが経済が回り始めると深刻な人手不足が課題となってきました。高いと思われていたカットフルーツが、施設内で提供できない現実を前に、直ちに使用可能で様々なバリエーションを持つFLフルーツのオーダーが高まってきたわけです。
COP27で画期的合意
一年最後の紙面、ここで世界に目を向けフードサプライチェーンの今後を考えてみましょう。
エジプトのシャルムエルシェイクで開催されたCOP27で画期的合意が結ばれ閉幕しました。
損失と損害/Loss & Damage
COP27は国連の気候変動枠組条約/第27回締約国会議のことです。
歴史上温室効果ガスは先進諸国が排出し、現在に至っても途上国では温室効果ガスの排出が殆どありません。
にもかかわらず苛烈な気候被害は途上 国に集中し、今夏パキスタンを襲った大洪水では、国土の1/3水没、被害総額は400億ドルを上回っています。
またモロッコを始めとするサハラ砂漠以北の国では、今年になって一度も雨が降らないほどの大旱魃が続き、数百年暮らした地域を放棄せざるを得なくなった村々が多くあります。
気候正義 Climate Justice という言葉があります。つまり、
気候変動に対する負担や利益を公平に共有する人権的視点
これこそが損失と損害の基金を創設した国際社会が共有する理念です。
フードサプライチェーンに強まる圧力
世界中の温室効果ガスの1/3をフードサプライチェーンが排出しています。車のEV化、産業のカーボンニュートラルの進展、その中で取り残されたセクターが食品部門です。
2040年には食品部門の排出する温室効果ガスが、全温室効果ガスの半分を占めるとの予測があります。
何れにしろフードサプライチェーンに対する環境圧力が一層強まってくることだけは確かです。
食品事業を展開する私たちは何をすべきでしょう。その核心にあるものは環境と人権です。
2023年、新たにスタートするFLの事業展開にご期待ください。
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今年一年お世話になりました。
良い年をお迎え下さい。