月刊 フルーツライフ No.121 |
新事業としてスタートしたフルーツと私は環境問題に正面から取り組んでいます。
世界中で廃棄される食品は年間13億トン、その数は全食品の1/3に及んでいます。
FLではフルーツの消費期限を延ばすことでフードロスの削減に取り組んできました。
また十月より、これまで病院・老健事業で使用してきたバイオ容器を可能 な限り全事業に拡大しプラスチック製品の使用を削減していきます。さらに段ボールを始めとした全ての包装資材を森林資源保護を目的とするFSC認証紙に変更していきます。
そしていよいよFLはフードサプライチェーンの根幹、農業生産プロセスに挑戦します。
急激に失われる土壌と水
国連環境計画/UNEPによると、過去45年間で世界の耕作地の40%にあたる5・5億ヘクタールが失われ、毎年1千万ヘクタールの農地が失われています。
また農業に欠かすことのできない水が枯渇しています。
地球は70%が水で覆われ、そのうち98%は海水、残りのわずか2%が淡水です。しかも淡水の70%は南極大陸の氷で、地球上で私たちが耕作に利用できる水は本当にわずかしかありません。
大量生産を求める農業
UNEPは急激に失われる土壌と水の原因は、現在の農業システムにあるとしています。
安価な作物を生産するために大量の化学肥料・殺虫剤・エネルギー・水を使用し、農地が自ら回復する力、回復に必要な時間を失わせているからです。
負担をかけない農業とは
最早地球は大量の化学肥料や殺虫剤や水に耐えられなくなっています。
化学肥料や殺虫剤や水を使わない農業、すなわち持続可能な農業とはどんな農業なのでしょう。その答えが有機農業=オーガニックです。オーガニックはこう定義されています。
「資源の循環を育み、生態系のバランスを促進し、生物多様性を保全する文明的、生物学的、機械的な手法を統合したもの」
世界で最も権威のある米農務省のオーガニック認証USDAは5項目の禁止事項を定めています。
①化学肥料の使用
②成長ホルモンの使用
③遺伝子組換え原料の使用
④放射線照射
⑤下水汚泥
日本における有機JAS制度
日本では1999年に有機JAS制度が創設されました。これまで統一した有機作物の基準がなかった日本の農業がやっと国際基準に基づくことになりました。有機JASに該当するものは4項目です。
①有機農産物
②有機加工食品
③有機畜産物
④有機飼料
FLの対象となる有機農産物は現状の日本の農業にとって高いハードルとなります。なぜなら日本の農薬使用量は世界的に飛び抜けて高いからです。
生産履歴と時間的条件
日本の農地には長年に渡って大量の化学肥料が使用されてきています。そのため有機農産物を製造するためには、圃場(≒農地)の履歴と、転換開始から最初の収穫まで三年間の猶予期間が必要となります。
つまり農家にとって貴重な農地を何の収穫もなく三年間遊ばせた上、有機農産物の収穫量も定かに予想できない状況では、有機農業に挑戦する意欲が湧いてこないのが実情です。
食物連鎖と生物多様性
食物連鎖とは、ある生物のもつエネルギーが他の生物に利用され、生物に欠かせない元素が繰り返し利用されていく物質循環をいいます。地球はこうした生物多様性の下バランスのとれた生き物の構成が保たれています。
そして現在の農業システムはUNEPが指摘するように多様な生物種のバランスを壊しているわけです。
農業生態系と窒素循環
農地でおこる生態系は農業生態系といい、自然状態に比べ人間の手が加わる分、生物群の数が少なく食物連鎖・物質循環が自然生態系に比べ単純なものとなります。
例えば窒素循環では、作物が取り込んだ窒素を収穫物として農地外に持ち出されてしまうため、窒素の出が入りよりも多くなり、生産をつづけるためには窒素肥料が必要となってきます。
有機農業は窒素循環を化学肥料に頼ることなく本来ある土壌有機物から補っていかなければなりません。地力を高め肥沃な土壌をつくり、圃場近くに食物連鎖を担う生物が生息しやすい緩衝地帯環境をつくることも必要です。その結果有機農業そのものが生物多様性を守り、健全な地球環境をつくる役割を担うことができるわけです。
有機農業を環境に、そして企業の成長に
こうして考察を進めていくと、菜園的規模ならともかく、一農業者が国内で有機農業を実践するためには公的支援がなければ一定規模の事業として成立することは難しいと思います。
しかし世界の農業は明確に有機農業に向かっています。2020年の一年間で世界の有機農業面積は202万ヘクタール増加し、特に豪州では3万6000ヘクタールに達しています。
また有機農業に従事する農業人口は280万人、これは全世界の農業者の5%に及んでいます。
最早私たちの地球は人間による環境負担に耐えられなくなっています。環境を考えた時、私たちは現状の農業生産から訣別しなければならない時期に来ているのです。
輸入からオーガニックムーヴメントを創りだす
食は人が生きていく上で欠かすことのできないなものです。それほど重要であるからこそ持続可能でなければなりません。
FLはオーガニック先進国である豪 州から有機果物の輸入に挑戦します。 先ずはNZ(ニュージーランド)のリンゴとキウイから。
NZにはバイオグロと いう有機認証制度があり、USDAに準ずる高い国際的信用があります。
NZ北島東岸のホークスベイはリンゴの有名な産地です。リンゴは保存可能で時間的劣化が少なく夏の季節に旬を迎えます。
またNZ特産のキウイは既にスーパーの店頭にオーガニックキウイが並んでいます。
有機作物認定工場に
FLでは営業・工場担当者二名の有機JASライセンスを取得しました。また 年内に有機JAS認定工場のライセンスを取得する 目処がつきました。さらに来春には有機JAS輸入業者ライセンスを取得する準備を進めています。
山形から有機果物を
先ず有機作物の需要が多くロットの大きな学校給食から始めます。国際基準となっているUSDAやbiogroの果物を輸入し、学校給食でオーガニックムーヴメントを創りだしていきます。その過程で山形で有機果物の栽培に挑戦していきます。
FLはフードサプライチェーンの一翼を担うメーカーとして環境と人権を成長の中心に据え ています。FLの未来に期待してください。