2022年 05月 03日
月刊フルーツライフ No.116(通算144) |
月刊フルーツライフ No.116
急激な円安困難な原料調達
高騰する食品
コロナ禍に加えウクライナで戦争が始まり、円安が急激に進んでいます。
日本は食料のほとんどを海外からの輸入に頼っており、想定をはるかに超える円安は直ちに食品価格に反映されます。FLも食品メーカーとして対応を迫られています。
円安は日常生活にも影響が出始め、エネルギー・ガソリン等の値上げで物価高騰が心配されます。コロナの収束が見えいない中、食品を始めとした生活用品の値上げは一層景気の先行きを危うくしています。
為替リスクをヘッジできない
FLは年間およそ100万USDの貿易事業を行なっています。
今年初めの時点で為替レートを110円/USDで原価計算していました。ところがウクライナで戦争が勃発するや、いきなり130円を超え更に円安が進む勢いです。しかも円はドルに対してだけではなく、ユーロや人民元に対しても安くなっており円独歩安の様相を呈しています。
原因の一つに米FRBの利上げがあるとはいえ、結局は日本のファンダメンタルそのものの低下が一番の要因と思われます。
FLでは、これまでクーポンスワップ(円⇄ドルを固定レートで交換する仕組)で為替リスクをヘッジしてきました。しかし想定を超える急激な円安でクーポンスワップそのものが効かなくなっています。
為替変動で製品価格そのものが直接上下するわけではありません。円安によりドル建てで行う輸入品の価格が上昇し、逆に輸出品は価格が下がることで競争力が増すことになります。これはアベノミクス全盛の時と全く同じ構図です。
トヨタを始めとした輸出企業にとって円安による利益は、血の滲むような努力で利益を生み出さなくとも小手先の金融政策や為替操作で利益を生む安易な構図を作り出してしまいました。結局現在の円安は日本のファンダメンタルを客観的に評価された現実であり、円安が一時的なことではなく、奇しくもコロナと戦争が日本経済の深刻な現状を表面化させたわけです。
急激な円安を前に、コロナさえなければインバウンドのチャンスと言われることがあります。
しかし中国を始め外国人観光客にとって安価に提供される上質なホスピタリティーと安い商品が訪日理由でした。
つまり円安インバウンドは「蛸は身を食う」という諺通り、今は良くてもやがて自分の命まで食べてしまうことになりかねません。
現にソウルや上海に行ってみると、十年前に比べて全てのものが高くなっていることを実感します。実は高くなっているのではなく円の価値が下がっているためです。
日本は革新的なイノベーションと経済のパラダイムチェンジを決断しない限り、先進国から脱落することが現実味を帯びてきています。
封鎖された上海
徹底したゼロコロナ政策にもかか わらず感染が急拡大した上海がロックダウンされ一ヶ月が経ちました。
人口2,600万人、中国経済の中心都市上海が封鎖されたことで世界経済に大きな影響が出ています。
上海港は東アジアのハブ港であり、日本に輸入されるほとんどのコンテナ船は上海を経由しています。上海港が封鎖されたことで、アジア・インド・アフリカ・ヨーロッパ・中南米からの船が寄港できず、隣の寧波に押し寄せています。そのためFLのタイ・コスタリカからのパイナップル、ギリシアからの黄桃も大幅に入船が遅れています。
これも日本がインフラ投資を怠り国際的ハブ港を作ってこなかったツケが今になって回ってきていることを示しています。
大洪水に見舞われた南アフリカ・ダーバン
4月中旬、南アフリカ東部一帯を記録的な大雨が襲いました。大規模な土砂崩れや洪水が発生し、南アフリカ政府はインフラなどに数十億ランドの被害が出たと発表しました。
南アフリカ最大の貿易都市ダーバンが冠水し、現在も港湾機能が失われています。更に長引くコロナ禍で各地で暴動が発生しています。加えてウクライナで戦争が勃発し、南ア産の洋梨・黄桃・アプリコットは出荷が止まったままとなっています。
困難な時だからこそ供給を絶やさない
コロナ・戦争・気候変動、次々と困難が襲ってきます。どれも一企業が解決できる問題ではありません。
長引くコロナ禍で身を削って営業活動を行なっているJFSA会員やNB顧客の得た貴重なビジネスチャンスを逃すことなく商品を供給し続けること、それがメーカーとしての責任です。安定した商品供給こそが日頃の取引に対する感謝の証と思っています。
FLは既に今夏の冷凍フルーツ原料を確保しています。
昨年春の花付きの時期に北半球全域を襲った霜害で温帯地域の桃が壊滅状態になりました。
長引くコロナ禍、勃発した戦争、追い討ちをかけるような円安、ただでさえ滞っている世界貿易の見通しが全くつかなくなっています。そして市場では食品が上がり始めました。
学校給食も食材の高騰で予算不足になり始めました。削られ始めたのはフルーツやデザートの献立です。予算が不足するや直ちに給食献立削減に及ぶ市町村の学校給食に対する理念のなさには呆れますが、そうした市町村が少なくないことも現実です。
こうした値上げ圧力の中、FLは今年度製品値上げは行わない決意です。一般にB to Bのメーカーは値上げがし易い立場にありますが、直接消費者を相手とするB to Cの場面での値上げは消費側に選択権があり難しくなります。だからこそメーカーの貢献度が問われます。FLは困難な時だからこそサプライヤーとしての役割を果たす覚悟です。
日本経済の行方
日本のファンダメンタルの評価が経済を苦境に立たせている以上、革命的なパラダイムチェンジを決断していく道しか日本経済の復権はありません。そのパラダイムチェンジのキーワードは環境と人権です。企業がこうした社会的責任を果たそうとする姿勢がパーパス経営に繋がり企業の成長の原動力になっていくと思います。
FLは食品企業として正面からサーキュラーエコノミーに取り組み開発段階からフードロス削減を考えていきます。そしてFL女子社員のポジションと 賃金のジェンダー平等を実現していきます。
+++++++++++++++++
Fruits Life Co.,Ltd
by FruitsLife
| 2022-05-03 09:19
|
Comments(0)