月刊フルーツライフNo.98 |
月刊フルーツライフ No.98(通算126号)
◆きっと、地球はもう無理なんだ 寄稿 FL代表 佐野利治
2月はまだひと事のようだった…
2月の中旬、タイのホアヒンにいた。タイ人のエージェントと武漢の都市封鎖が話題になり、中国は凄いことをするなぁと話していた。
とはいえ、タイではパイナップルの不作が続き地球温暖化は世界中どこにいても逃れられないほど進んでしまっていることを実感していた。シャム湾に面したホアヒンの青い海を見ながら地球はもう無理なんじゃないかと思っていた。
COVID-19が初めて私たちの前に現れたのは2019年11月22日のことだ。そして、わずか一年余りで感染は世界中に拡がり、11月現在、感染者数は5000万人を超え犠牲者は125万人に達した。
COVID-19をただの風邪と言って自らの無策を隠蔽しようとしていた国、例えばアメリカとかブラジルとか、私たちの国日本だ。取り得る全ての対策をとって感染を最小限に抑えた国、例えばドイツとかニュージーランドとか台湾とか、隣国の韓国だ。こうした歴史に記される危機には、どんなリーダーを持っているかで国民の幸不幸がこんなにも違うことをCOVID-19は私たちに思い知らせることになった。
■環境とウィルス
今までCOVID-19はどこで生きていたのだろう?
中国奥地のコウモリを宿主としてひっそり生きていたらしい。しかしCOVID-19はコウモリから直接ヒトに感染したわけではなく、もうひとつ別の種を経由していた。その種とはヘビだった。COVID-19はヘビを宿主としてヒトに感染するようにRNAを変異させた。それが年の瀬近い、人でごった返した武漢の市場の中で起こったのだ。武漢の市場では様々な野生生物が生きたまま売られていた。ウィルスにとって異種混合は伝染に有利な条件だった。
19世紀に誕生以来初めて10億人に達した人類は、わずか一世紀で77億人に達した。爆発的に増え続ける人間は地球創生以来手つかずだった原生自然の中に入り込んでいった。増え続ける食糧を賄うために野生動物を食べるようにもなった。とりわけアフリカ大陸ではコウモリやサルやゴリラを食べるようになっていた。
例えばエボラウィルスはコウモリを宿主にするウィルスだ。コウモリからゴリラに感染したエボラウィルスは、ゴリラから簡単にヒトに感染した。致死率90%というエボラ出血熱は、1976年南スーダンに突然現れアフリカ大陸に人から人へと伝染していった。
エイズウィルスはどうだろう?エイズウィルスはチンパンジーを宿主として、エボラウィルス同様アフリカ西部でひっそりと生きていた。西アフリカでは動物性タンパク質の不足からチンパンジーを食べるようになっていた。市場では捕らえられたチンパンジーが生きたまま、或いはバラバラにされた部位として売られている。類人猿はヒトの近縁種のためウィルスは簡単にヒトに伝染する。案の定エイズウィルスは変異してヒトに感染し不治の病と恐れられるようになった。
COVID-19もエボラもエイズも情報の伝達をRNAで行っている。地球上の殆どの種は遺伝情報をDNAで行うのに対してこのウィルスたちは進化の途上で役割を終えていったRNAで遺伝情報を伝えており、そうしたことからレトロウィルスと呼ばれている。RNAはDNAに比して遺伝情報の伝達が不安定で変異が起こりやすい。つまり治療薬を開発してもウィルスが変異するため効かなくなってしまうのだ。
アマゾンは生物多様性の宝庫だ。地球上の酸素の1/3をアマゾンの広大な熱帯林が生み出しているという。地球温暖化の影響でアマゾンでは毎年大規模な火災が発生している。こうした森林火災は原生自然が残るオーストラリア、インドネシア、北米で頻発している。そして森林火災は木々を焼き尽くすほかにもう一つの役割を果たしている。それは、ひっそりと密林の中で生きてきた未知のウィルスを解き放つことだ。まるでホラー映画のような現実の話だ。
つまりウィルスは人類が誕生する遥か以前から、自分たちの生息地で穏やかに生きてきたにもかかわらず、人間によって目覚めさせられ私たちの前に現れざるを得なかったのだ。そしてその宿主として私たち人間が選ばれた。私たちは殆ど無限に存在し、無防備で意図も簡単に感染し、地球の果てまでも移動する、ウィルスは理想的な宿主を見つけだしたのだ。こうしてこの百年の間に私たち人間が行った原生自然の破壊と地球温暖化が、マラリア、デング熱、コレラ、ライム病、西ナイル熱という感染症を爆発的に増加させてきたわけだ。
■開けてしまったパンドラの箱
COVID-19には特効薬もワクチンも開発されていない。そもそもどんな感染症なのかもはっきりしていない。徐々にわかってきたことは、驚異的な伝染力を持ち、肺の奥深くまで侵入することで様々な疾患を併発し、完治したように見えても再発し、血栓ができやすく脳梗塞や心臓病を引き起こす…つまり何もわかっていないのだ。にもかかわらず、コロナは風邪程度、或いはインフルエンザより死亡率が低い、果ては武漢の細菌研究所からばら撒かれたと、自分たちの社会的或いは政治的都合で根拠もない情報が流布されている。
哲学者シモーヌ・ヴェイユにこんな言葉がある。
「科学における聖なるものは真理である」
私たちはデマや憶測や煽動によって新たに生まれた感染症に打ち勝つことはできない。それどころか人類は新たな感染症のパンドラの箱を開けてしまったのだ。近い将来COVID-19の治療に成功したとしても、より強力なウィルスが私たちの前に続々と現れてくるのではないだろうか。
仮に私たち人類に新たなウィルスに対処できるものがあるとするのなら、それはワクチンでも特効薬でもなく自然との共生でしかあり得ない。人口を抑制し、経済成長を抑え、エネルギー消費を減らし、物で溢れた豊かさを放棄することだ。
新たなウィルスの脅威も、急激にスピードを上げた地球温暖化も、既に私たちには止める術がなくなってしまった。私たちが今のままの暮らしを続けることに地球はもう無理なのだと言っている。それがCOVID-19からのメッセージなのだろう…。
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予想もつかなかった今期の決算を無事組み終わることができました。営業利益・経常利益ともコロナの影響が大きかったにもかかわらず良い数字を出すことができました。これもひとえに取引先各位のおかげと思っています。また困難な時にも挑戦する勇気を失わなかった社員の皆に心から感謝しています。
まだ先が見えない不安が続きますが、くれぐれもお身体ご自愛ください。
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フルーツライフ株式会社
center@fruitslife.com
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