月刊フルーツライフNo.92(通算120号) |
月刊フルーツライフ No.92(通算120号)
◆失われる教育、疲弊する家庭
新型コロナウィルスの終息が見えないなか家庭への負担が高まっています。
学校は2月末の全国一斉休校要請から既に2カ月以上が経過し、外出禁止も重なって家庭での閉塞感が限界に近づいています。
■失われる教育の機会
4月は新入学と新学期です。桜が咲く下で希望に胸を膨らませて通うはずの学校はいつ再開されるか目途も立っていません。
確かに誰も予想できなかったことであり、誰の責任でもありません。しかし直面している事実はどれだけ嘆いてみたところで変わるわけではなく、痛みが軽減されるわけでもありません。
今ここにある危機、それにどのように立ち向かっていくかがリーダーに問われています。
■国内の小中学校の現実
全国一斉休校が始まって子どもたちはどうしているのでしょう?
全国殆どの公立学校では4月から授業は全く行われていません。それに代わる課題や宿題はわずかなプリントが配布されている程度で、提出期限があるわけでもなく添削もありません。取材した限り全国どこの学校も同じでした。
つまり文科省は、何ら指針を示すことができず何も対応できないでいます。結果として教育が家庭任せとなり、家庭による教育機会の格差が現実になっています。
(写真は沖縄市のプリント)
■不規則な生活、増えるゲーム時間
登校しない生活は謂わば毎日が日曜日のようなものです。こうした生活が続けば子どもでなくとも誰であっても生活にはメリハリが失われ不規則な毎日になって当然です。勢い子どもたちはゲームの時間が増え勉強の習慣から遠ざかっていきます。
■深まる孤立感
Stay Home家でいる時間が長くなれば友達に会えない、一緒に遊べない、学べない子どもたちにストレスがどんどん溜まっていきます。
共働きで一人留守番している子どもの家庭では、母親が帰宅するとすごく甘えるようになり、お腹が痛いと訴えるようになったと言います。
また学校に行けないことが長期化すると不登校の誘発が心配されます。
■上海の子どもたち
先日上海のビジネスパートナー(二人のお子さんのある女性)と話をしていて子どもたちの話になりました。
新型コロナウィルスが武漢から中国全土に拡がった時、上海でも学校は全て休校となりました。すると1週間ほどでオンライン授業が始まり、子どもたちは普段と同じカリキュラムで毎日PCやタブレットの前で授業を受けているそうです。そのため子どもたちは学校に通っている時間割と同じ生活を送っているということでした。しかも授業は双方向で先生はそれぞれの子どもに対応しているということでした。
■デジタル化による教育機会の均等
新型コロナウィルスが突然だったのは中国も同じでした。しかし中国で学校が休校になるや、1月29日に中国教育部から直ちに自宅オンライン授業推進通達が出されました。
通達が出された二日後の31日には、アリババがグループウェアDingtalkを教育機関向けに無償提供を表明しました。アリババ以外にもWechatやQQを運営するテンセントも教育機関にサービスを無償提供すると表明し、中国全土でオンライン授業が始まりました。
結果2月10日までに3百都市、5千万人の子どもたちが自宅で普段と同じ授業をオンラインで受けることができるようになりました。
(写真は上海市のonLine時間割)
■いずれ回ってくる家庭任せの教育の付け
中国のオンライン授業が全て順調であったわけではありません。しかし停課不停学(授業は止めても学びは止めないの意)というスローガンの下、第一は子どもの教育権を守ることが目的として解決していったようです。そして韓国・台湾でもオンライン授業は行われてきました。
一方日本では文科省が休校期間を家庭に丸投げした結果、ゆとりのある家庭では塾のオンライン授業が進み、余裕のない家庭の子どもたちは学習の機会を失ったままこの数ヶ月を送らざるを得なくなっています。学校の再開が遅れれば遅れるほど、授業が再開された時に大きな学力差がついていることが予想されます。
教育以外でもPCR検査数がOECD中メキシコに次いで下から二番目の日本。つまりこうしたこと全てが新型コロナ終息後の世界における日本の地位を表していくと思います。
■学校給食のない影響
給食が休みの結果、子どもたちの栄養の偏りが心配されています。
毎日三食ご飯を作ることは母親にとって大変なことです。まして仕事を持っていればお昼はうどんのような簡単なものになりがちです。
かねてから「子ども食堂」などの善意に子どもの食を頼らなければならない日本の現状で、お昼に給食が食べられないことは子どもたちの成長にとって大きな問題です。学校給食のバランスの取れた栄養が子どもたちの成長に欠かせない役割を果たしてきているからです。
■食費の増加
毎日三度の食事を作り、外食を控えているため家計の食費の割合が大きく増えています。
子どもの学齢と人数にもよりますが、取材では4割以上増えた家庭もありました。特に母親が外に仕事に出る家庭では留守番の子どもたちに昼食に加えて、おやつや牛乳などの飲み物を用意しておきます。母親が家に帰って冷蔵庫を開けると全て食べてしまって何も残ってないと言います。
どこの家庭でも仕事が減り収入が減っています。しかし家計支出は減るどころか増えているのが現実です。
■暮らしの限界
非常事態宣言が5月末まで延長されました。しかし今月中に感染者数が減少していく確証があるわけではありません。
私たちがこの危機を乗り越えるためには今までと違った仕組みにチャレンジしていくことです。教育においても仕事においてもリスクを恐れず果敢に挑戦していくことが必要だと思います。
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フルーツライフ株式会社
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