月刊フルーツライフ No.86(通算114号) |
月刊フルーツライフ No.86(通算114号)
◆「環境」が世界のすべてを決定する!
写真は2015年9月の国連サミットでSDGsが採択された時、国連本部の壁にプロジェクトマッピングされたものです。
SDGsとは「持続可能な開発目標」のことを言います。
Sustainable Development Goals エスディジーズ
■果たして持続可能な開発ができうるのか?
去る9月24日国連の温暖化対策サミットで、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんがこう怒りをぶつけました。
「あなたたちが話しているのは、お金のことと経済発展がいつまでも続くというお伽噺ばかり。恥ずかしくないのでしょうか!」
■失われる生物多様性、狂暴化する気候
世界の温室効果ガス排出量は記録的な水準に達しているにもかかわらず、未だにピークに達していません。しかも過去四年間は、記録が残る中で最も暑い四年間となりました。
北極圏の冬の気温は3℃高くなり、氷は解け始め、海水面は上昇し、海水温の高温化は海の生物のゆりかごサンゴ礁を死滅に向かわせています。
こうして温暖化は生態系そのものに影響を及ぼし、気温上昇の著しい極地では、生物は急激な変化に対応することができなくなっています。ホッキョクグマの命は風前の灯火、種の絶滅が間近に迫っています。
温暖化は動物たちばかりではなく植物にも影響を与え、植物の北限は北に上がっていき、農作物の作付けや収穫にも変化が表れています。
また蚊を媒介とするマラリヤやデング熱は、熱帯だけではなく日本のような温帯地域にまで及ぶようになりました。
そして台風の巨大化、頻発する干ばつと集中豪雨、百年に一度と言われた自然災害が毎年のように起きるようになりました。
■パリ協定の強制力
こうしたなかで国や地方公共団体はもとより、民間企業も環境への対応が問われるようになってきました。その強力な力となっているものが、2015年12月に採択されたパリ協定です。
パリ協定は、気候変動枠組条約の下に採択された国際的な国家間合意です。
97年に採択された京都議定書に代わる新たな国際的枠組みとして発効したパリ協定は、参加するすべての国に法的拘束力が及ぶ厳しいものです。
各国は温室効果ガスの削減義務を負い、日本は2030年までに2013年比マイナス26%を義務付けられています。そしてその目標を達成する主体に民間企業も入っています。
■銀行の責任宣言
国連環境計画UNEPは、温暖化対策を中心に地球規模の課題解決に向けた金融の取り組みを「責任銀行原則」としてまとめました。
そこには環境・社会・人権の三つのサスティナブル金融が掲げられています。
世界金融を柱とするメガバンクは、責任原則の履行が銀行自体の格付けに繋がり、サスティナブル金融が銀行そのものの存亡にかかわるようになりました。
因みにCO2排出の最たるものである石炭火力に投資する日本の3メガバンクは世界から非難の的になっており、やがて石炭火力は座礁資産となって銀行経営そのものを危うくすることは明らかです。
■食品ロスと食料廃棄
国連食糧農業機関FAOが「世界の食料ロスと食料廃棄のレポート」を発表しました。
レポートによると世界の食料生産量の1/3に相当する13億トンの食料が毎年廃棄され、特に先進国では食品のサプライチェーンの段階でほとんどの食品が廃棄されています。
また食料生産の過程では膨大な資源が費やされ、多くのCO2が排出されています。
■ドイツの試み
今年2月にドイツ政府はSDGsに貢献するための「食品廃棄物削減のための国家戦略」を決定しました。
これによると30年までに、現在年間1,100万トンの食品廃棄物を半減する目標を立て「生産→加工→流通→消費」のすべてのプロセスで生産者・事業者・消費者が一体となって食品廃棄削減に取組むことを示しました。
・食品の小分け販売
・臨機応変なサプライチェーンの構築
・食べ残しのないメニューの開発
・インテリジェント包装の研究
またベルリン市は廃棄物削減都市を宣言し「ベルリンゼロウェイストへの道筋」を発表しました。
■スタートアップ企業
ベルリンに本社を置くスーパーマーケット・サープラスSIRPLUSは「廃棄食品を救う!」をスローガンに、これまで廃棄されてきたパッケージ破損・期限切れ間近・廃棄処分食品等の7割引き販売を行い廃棄食品を削減しています
オリギナル・ウンフェアパックトOriginal Unverpacktは商品の梱包を無くして販売し、プラスティックパッケージを排し廃棄物ゼロを目標とし、店舗では消費者が持参した容器に量り売りをしています。
■遅れる日本の食品業界
FLは食品メーカーとしてかねてから疑問に思うことがあります。特に学校給食の画一的な対応です。
例えば缶詰で賞味期限が3カ月以上残っているのに使わない、内容物に何ら影響がないのに缶が少し凹んだだけで返品する、チルドフルーツの前日生産を必須条件とする…。
官僚的ともいえるこうした商慣習はSDGsの目的を理解していないばかりでなく、食の安全と無関係なところで徒に環境負担を増やしているだけです。
グレタさんが言うように、私たちにはもう時間は残されていません。営利企業であっても環境対応ができなければ市場から退場しなければなりません。
それこそが今の時代、環境の世紀です。
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フルーツライフ株式会社
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