月刊 Fruits Life No.65 |
月刊フルーツライフ No.65(通算93号)
◆少子化なのに予算は削減
そろそろ年度末の繁忙期を迎える時期です。しかし学校給食のオーダーはお正月気分がつづいたままのように静かです。
昨年の年度末もこうしたのんびりムードが漂っていました。果たして何が起きているのでしょう?
◇厳しい学校給食予算
・野菜の高騰
今冬は冷え込みが厳しく、地域によっては積雪も多かった影響で、年明けから野菜が高騰しています。一昨年も秋口の長雨の影響で野菜が高騰しました。
学校給食では、たとえ野菜が高くなったとしても野菜を使った献立を削るわけにはいきません。
学校では生鮮食品の思わぬ高値に対応できるように予算に幅を持たせています。その幅の部分が年度末需要の余剰予算です。
ところが二年続けての野菜の高騰が予算を逼迫させています。
・野菜が本当に犯人なのか?
元来生鮮食品は天候や収穫に左右されやすいものです。
今年はミカンをはじめ柑橘類が大凶作で市場にほとんど出回っていません。つまり農産物でも水産物でも、食品が自然の産物である以上そうした豊凶はつきものであり、今年だけが特別なわけではありません。
特に野菜に関して言えば、一年を通して安かった時期もあったわけで、予算の逼迫の原因を野菜だけとすることには無理があります。
◇何が起きているのか?
毎年学校給食予算は足りなくなっています。
例えばアジの開きが高いから献立をちくわに替えたりとか…。思わず笑ってしまいますが、教育現場にとっては深刻な問題です。
学校給食はカロリーだけを考えがちだった時代から、成長期の子供たちに栄養があって美味しいものを、さらに季節に旬なものを提供するというように変わってきました。これは給食を教育の一環と考え、学校に栄養教諭を配置し食育を推進する新たな文科省の方針に基づいています。
ところが子供たちに対する教育予算は年々減り続けています。つまり野菜が高いから給食予算が逼迫しているのではなく、国が子供たちへの予算を削っていることが逼迫の最大の原因です。
◇減り続ける子供一人当たりの教育費
文科省の地方教育調査によると子供一人当たりの学校教育費は年々減少し、小学校ではH14年、中学校ではH22年、高校ではH19年をピークに減り続けています。
こうした子供一人当たりの教育費の減少は、学校給食だけではなく子供たちを取り巻く教育環境に深刻な影響を及ぼしています。
◇深刻化する子供の貧困
日本の子供の貧困率が急激に進んでいます。
先進国で作るOECD加盟30ヶ国の中で、日本の子供の貧困率は4番目です。
そしてひとり親家庭の日本の子供の貧困率は、54.6%とダントツでトップになります。つまりひとり親家庭の半分以上の子供が貧困に陥っているということです。
その原因は、ひとり親家庭の多くが母子家庭であり、日本の貧困層の特徴は、正規雇用の機会の少ない女性に集中していることにあります。
そのため母親が家計を支えるひとり親家庭の子供の貧困率が際立つ結果となっています。
◇貧困と栄養と学校給食
貧困層の家庭では朝食を摂らない傾向があります。またインスタント食品の摂取頻度が高く、その反面野菜を摂らないことが多く、果物に至っては全く食べることがありません。
こうして子供の貧困化は、成長期の子供たちに深刻な影響を与えます。
・所得格差が栄養格差に
エネルギーとなる栄養は、炭水化物・脂質・たんぱく質の三つです。
貧困家庭の子供はその食習慣から、炭水化物の摂取量が多くなり、逆に所得が増加するに従って動物性たんぱく質やビタミンなどの摂取が多くなります。
その結果、炭水化物を多量に摂取する子供は肥満になりやすく、成長に欠かせない動物性たんぱく質やビタミンが不足することになります。
こうしたことは、成長期の子供にとって、骨格や筋肉ばかりではなく脳の発達や、将来の健康に深刻な影響が及ぶことになります。
・学校給食の重要性
学校給食は、バランスの取れた栄養素はもとより、食事を皆で食べる楽しさや、地元で収穫したもの、季節に旬なものを食べることで食育の一環となっています。
そして何よりも、一日一度きちんとした食事を摂ることが、子供たちの肉体的及び精神的健康の担保となります。
・学校給食普及率
小学校の学校給食の普及率は百%近くなっていますが、中学校では二割近く学校給食の提供が未だにできていません。
また政令市での普及が悪く、名古屋市のようにスクールランチでお茶を濁している市もあります。とりわけ名古屋市は市の予算規模が巨額にもかかわらず学校給食の完全実施を行っていません。こうした現実は市政の教育への怠慢以外の何ものでもないと思います。
◇食のセーフティネット
格差が拡大し、子供の貧困化が進んだとしても、学校で給食さえ食べれば健康が保たれる。学校給食にはそうした「食のセーフティネット」の役割があります。
人が生きていく上で必ず必要な食事を貧富に関係なく、すべての子供が、お腹いっぱい、美味しく、楽しく食べられるようにすることは社会として最も大切な一つです。
フルーツライフは学校給食に従事するメーカーとして、親の貧富に関係なく、斉しく子供たちが健康に、健やかに、そして何よりも幸せに育っていくことを心から願っています。
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フルーツライフ株式会社